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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第100回 芳賀栄太郎(後編)
「熟女AVは朝イチがキモ」

前編はこちら→「生保に入って外交員をキャスティング」

監督

「関西人の中野貴雄が、大阪ではオバサンのことをオバハンと呼ぶんですよって言うんで、ハンを『犯す』っていう字にしたらどうよ? って冗談まじりで『オバ犯』(2003年/V&R)というタイトルにしたんですよ。おばさんを犯すレ●プ物。それがあんなに売れるなんて、ビックリしましたね。この作品で、『ビデオ・ザ・ワールド』誌(コアマガジン)で監督賞をいただきました」

──V&Rプランニング出身者としては、安達かおるカンパニー松尾バクシーシ山下に続いて、4人目の監督賞でした。芳賀監督は、シークレット、ビッグモーカルを経て、監督としてV&Rプランニングに戻ることになり、1998年から「栄太郎」レーベルで熟女ドラマを撮るようになったんですよね。

「当時のV&Rでは、ハメ撮りはできてもドラマ物を撮れる人はいなかったですからね。安達さんが、果敢にレンタルAVのスター女優だった小林ひとみにアタックして呼んだりして、僕が何本か監督しましたね」

──小林ひとみのV&R作品は1999年ですね。

「その頃はCSでアダルト物の放送が始まっていて、それをV&Rでいっぱい撮るようになったんです。60分作品のドラマを5話CSで放送して、それを240分物に編集してレンタル作品にするという作り方をしていましたね」

──芳賀監督が今撮っている熟女メーカー・マドンナも、最初は団地妻シリーズなどをCS放送用に作っていたと聞いています。

「僕もマドンナさんのCS作品を撮らせてもらってました。あのへんから、歯車が複雑になってきたんです。レンタル物があるし、CSがあるし、セルAVもそろそろ始まってきた頃でした。レンタルの業務もやりながら、新しいものに乗り遅れないようにCSやセルの業務も掛け持ちで担当していましたから、大変な日々でしたね。特にセルについては、安達さんから『昔、営業やってたんだから、またやってくれないか』って言われて。『これ、全国のセル店のリストなんだけど』って渡されて『一軒ずつ行ってこない?』って。これが800軒以上あった。レンタルの問屋だったら、せいぜい5〜60軒ですよ」

──お店を回って注文を取ってくるわけですか?

「違います。安達さんの戦術はすごいですよ。体ひとつで僕が九州に行くと、V&Rから送られた商品が佐川急便の営業所に届いていますから、レンタカーにその商品を積んで、V&Rの営業社員1人と一緒にお店を回って手売りですよ。ダンボール1箱に50本入ってますから、それを買い取ってもらえば1本2000円として10万円。これを毎日5箱ぐらいさばいていくんです」

──かなり過酷なミッションですが、セルへのシフトチェンジを、会社として重視していたってことですよね。

「安達さんは、商売人としての先見の明がすごい。本当に尊敬してますよ」

──今はアタッカーズやマドンナでドラマ物を撮られていますが、そこまで惚れ込んだV&Rを離れた経緯というのは?

「2003年にアメリカに行かされたんですよ。安達さんがやっぱり先を読んで、『これからはグローバルな時代だから』って言うんで。アメリカ本土に1週間ぐらい滞在しながら撮影して、その編集をハワイでやるので、月に20日間くらい日本に帰ってこれなくなるという日々が始まったんです」

──アメリカで撮ったものというのは?

「普通のアダルトビデオです。女優も男優も日本から連れていって。アメリカで撮って、ハワイで編集して、ブラジルに送って。V&R INTERNATIONALっていう会社をブラジルに設けてたんです」

──海外で撮影と編集をして、海外向けに売るポルノ作品ということですね。

「そうです。その仕事でアメリカにいるときにアタッカーズのプロデューサーから連絡があって、マドンナのプロデューサーと会ってみないかという話を頂いたんです」

──アタッカーズのプロデューサーとはそれ以前にもお仕事をされていたんですか?

「アタッカーズの前身のセルビデオのメーカーがあって、そこで知り合ったんです」

──このときの出会いがきっかけで、V&Rを離れることに?

「そうですね。アメリカに1回行くと20日くらい帰ってこれないし、演出以外にもやらなきゃいけないことがいっぱいあって、自分には荷が重いなあと思って」

──そこへ、マドンナからディレクターとして招かれたらやはり心が動きますよね。

「監督として撮るだけで済みますからね。ずっと撮ってきた熟女物ですし、ゼロからのスタートじゃないですから。スタッフも、長くチームでやってきた人を呼べるので」

──それでも、まだセルの熟女物はマニア向けのジャンルでしたよね。

「だから、赤字にならないように頑張ろうね、っていう、夜明け前の時期から始まったんです。マドンナでの最初の3年間はとにかくエキサイティングな時代でした。どうにか当ててやろうっていうんで闘争心がわいて、まだレンタル作品で人気のあった牧原れい子とか、引退していた菊池エリも呼んで起用したり、がむしゃらに撮ってました。デビュー直後の紫彩乃とのタイミングのいい出会いもよく覚えています」

──紫彩乃さんとはどういうきっかけで?

「彼女の事務所とは長いつき合いで、おばさんが所属したら必ず僕の所へ連れてきてくれてたんです。紫さんは美しくて、驚きましたね。まだ30代で、肩書は大学院生で」

──そこで生まれたのが、マドンナ1周年記念の大作『マドンナ学園〜母たちの反乱〜』(2004年)ということですか。菊池エリと紫彩乃の2枚看板は豪華でしたね。

「そう。これが一番のターニングポイントですね。軌道に乗ったのはここからですね」

──大物女優の復帰作も手掛けるようになりましたね。『嫁の母 松本まりな』(2011年/マドンナ)など。

松本まりながAVに復帰したと聞いて、すぐ、僕に撮らせてくれないかって言ったんですよ。10代でデビューした初期の彼女も撮っていたんで」

──これは大ヒットしたんですよね。あと『嫁の母 瞳リョウ』(2013年/マドンナ)も芳賀監督の作品ですよね。「伝説的AV女優として90年代に一世を風靡した瞳リョウがマドンナで初本●解禁!」という触れ込みですが、芳賀監督の熱心な口説きがあったんだと想像します。現在は、熟女デビューする女優さんが百花繚乱ですが、熟女女優の気質の変化って感じますか?

「気のせいかもしれないんだけど、昔撮っていた女優さんのほうが一生懸命だったような気がしますね。今はプロダクションから撮影のシステムも説明されているからいろんなことをわかっているけど、昔の女優さんは現場のノウハウなんて何も知らずに来るし、マネージャーもいないから全部自分で一生懸命やらなきゃならない。違いというとそこかなぁ」

──なるほど。

「世代の違いも大きいですね。今の40代くらいの女優さんと接するときはね、本音をまず探ろうとします。どういう人なのかがわかっていないと、地雷を踏んじゃうこともあるんです。たとえば、『栄養ドリンクください』っていうのでADが買いにいくんですよ。僕の認識からいうと、栄養ドリンクってリポ●タンDとかのたぐいなんだけど、『違うのよね、ポカリ●エットなのよね』って。そこでうかつにも『え!?』って言っちゃったもんだから、それが地雷になっちゃって、2時間くらいメイクルーム(=控室)に閉じこもって出てこなかったことがありましたよ(笑)」

──1日撮りでスケジュールを切ってるのに、2時間も穴が開いたら大きいですねぇ。

「まだかわいいもんですよ。あるベテランの人気女優さんは、夜9時くらいに撮影が終わって、あとはパッケージの写真を撮って終了っていう段になって、いつメイクルームから出てくるかなって待ってたら、5時間後ですよ」

──5時間も何をやっていたんですか!?

「わかんないです。覗きにいっちゃうと逆ギレされるんで(苦笑)。パッケージを朝に撮っておくべきだったって後悔しましたね。夏だったんで、空がもう明るくなってきていて」

──うわー。

「その女優さんは巨乳が売りで、僕は何本も撮ってるんですけど、朝、機嫌を損ねないことがすごく大切。朝の彼女は、まず『監督、重くなったんです』って、おっぱいを僕の頭に乗せるんです」

──ハハハ。

「『どう、重くなったでしょ?』って言われたら『そうですね』って言わなきゃいけない。そこから現場が始まる。だからね、初めて会う女優さんは朝イチで、どういう性格かなるべく把握しようと努力しています」

──それは熟女だからということですね。

「ですね。やっぱり海千山千を経ている人たちですからねぇ。いろいろ屈折もしてるし、そういう不思議ちゃんは若い女優さんよりいるんですよ」

──女優への演技指導では、どんなところに重点を置きますか?

「若い人でも熟女でも、芝居心がある人はいいんですけど、ない人の場合は僕が女優役になってADを男優役にして実演して見せる。それくらいやらないとわかってくれない。あと、僕の現場には必ず女性のADもいるんですよ。女優さんにとって、男性スタッフには言いにくいけど、同性にだったら話せることってありますからね。僕はつねにメイクルーム内の情報がほしいんです。今こういうことが起こっているという」

──そうか。女性スタッフの存在って大きいんですね。

「円満に現場を終えるというのが最終的な目標ですから」

──マドンナでもアタッカーズでも若い監督が出てきていますが、現状をどう見ていますか?

「今の監督が売れっ子になれるかなれないかは、プロデューサーの技量が大きいんです。ここ5年くらいは。前編でも言ったように、アタッカーズのプロデューサーはディレクターを非常に尊重する。だから、周りの若い監督はみんな言うんです。『アタッカーズで撮りたい』って」

──ストレートに自分の力量を発揮できるから。

「そう。プロデューサーのいいなりじゃなく仕事ができるから。こういう部分が残っていかないと、業界はガラッと変わっちゃうでしょうね。ロボットでも監督できるようになるんじゃないですかね」

──AIが監督する日が来るかもしれませんね。芳賀監督はみずから行動を起こして熟女AVで注目され、今は大手のマドンナやアタッカーズで撮れているというのは、やはり幸せなことだと思っておられますか?

「思ってます。呑気にマイペースでやらせてもらえて。僕は昔と変わってないんです。レンタル時代からカメラはやらず、カメラマンに撮ってもらって、僕はモニターの前に座っているという形で。音声、照明など技術スタッフはもう30年以上のつき合いなんですよ」

最近の娯楽は何ですか? と聞くと芳賀監督は「孫と遊んでいるときが一番楽しいですね」と照れたような笑顔を見せてくれた。AV業界に従事して充実した人生を送っている男がここにもいた。

前編はこちら→「生保に入って外交員をキャスティング」



Profile
芳賀栄太郎

神奈川県生まれ。1986年に創立されたV&Rプランニングに、営業マンとして入社。1989年にAVメーカー「シークレット」を立ち上げ、中野貴雄、ラッシャーみよしとともに活動し、淫乱女優「千代君」で大ヒットを飛ばす。1990年、ビッグモーカルで56歳女性を起用した日本初の熟女AVを監督し、立て続けに熟女作品をリリース。熟女AVのパイオニアとして、現在もアタッカーズやマドンナを中心に、精力的に作品を撮り続けている。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報

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Back number
第102回 代々木忠(後編)「さらけ出してくれてありがとう」
第101回 代々木忠(前編)「愛染恭子との偶然の出会い」
第100回 芳賀栄太郎(後編)「熟女AVは朝イチがキモ」
第99回 芳賀栄太郎(前編)生保に入って外交員をキャスティング」
第98回 安達かおる(後編)「絶対に疑似は使わない」
第97回 安達かおる(前編)「人が目を背けるものを撮りたい」
第96回 ボトムズ(後編)「SWITCHの頭に込めた大きな秘密」
第95回 ボトムズ(前編)「ブルマ作品の複雑なルール」
第94回 赤羽菊次郎(後編)「ヘンリー塚本の台本なら撮ってもいい」
第93回 赤羽菊次郎(前編)「葬儀屋さんにちなんであの巨匠が命名」
第92回 YUMEJI(後編)「おじさんたちに夢の国を見せたい」
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第90回 薄刃紫翠(後編)「四つんばいのヒザを巡る対立」
第89回 薄刃紫翠(前編)「メス犬調教がライフワーク」
第88回 九十九究太(後編)「タカラ映像だからこそできる表現」
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第86回 西中島南方(後編)「デビュー女優の複雑な初SEX」
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第84回 貞邪我(後編)「ドラマを支えるオリジナルBGM」
第83回 貞邪我(前編)「武道館ライブの後に残った大借金」
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第81回 春童(前編)「悪友と回し読んだエロ本に父の名が」
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第79回 馨(前編)「いつか辞めるはずだったのに」
第78回 なぎら健造(後編)「言葉よりも女心を雄弁に語るもの」
第77回 なぎら健造(前編)「女性が共感できるレ●プドラマ」
第76回 DUKE(後編)「あの子はどんなSEXするのかな?」
第75回 DUKE(前編)「長続きしたのは桃太郎の仕事だけ」
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