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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第97回 安達かおる(前編)
「人が目を背けるものを撮りたい」

後編はこちら→「絶対に疑似は使わない」

監督

VHSテープの時代から多くのファンを熱狂させてきた異色AVメーカー「V&Rプランニング」を設立した安達かおる監督が、ついに当連載に降臨!! スカ●ロ作品を連発した果てにビデ倫(VHSテープ時代の唯一の審査組織)からの退会を余儀なくされた業界の異端児にして、あのカンパニー松尾バクシーシ山下などの名監督たちを世に送り出したレジェンドが、AVを撮り続ける理由をここに明かす!

──今月のスカパー!アダルトでは、安達かおる監督が撮っている「クソ野郎と少女と美しき世界〜ブッ飛んでるけど愛がある〜」(ダイナマイトTV)が放送されます。安達監督の2本の作品を収録したオムニバス番組なのですが、1編は、年端もいかない女の子が近所の中年男の性欲を煽り、彼の望みのまま排泄物を垂れ流し、性行為におよぶ物語。もう1編では、夏休みの少年が山奥に住む美少女姉妹によって調教されます。まずは、こうしたストーリーに込めた監督の狙いについて、お聞きしたいと思います。

「作品のポイントとしては、主演の女の子が魅力的というところ。表現しづらい部分をあえて映像化したというところに、僕としては意味があるんですね」

──表現しづらい部分というのは、主人公の年齢設定的に、本来なら法に触れてしまうという点ですね。

「そうです。本来、表現としてもタブーだし、第三者に語ることもタブーじゃないですか。『僕って●学生くらいの女の子が好きなんだよ』なんて言うとロ●コン呼ばわりされてしまう。ただその一方で、10代の少女って魅力的なんですよ。男が性の対象として自分を見ていることを、大人の女性はわかっています。だけど、彼女たちは自分がどういう意図でジロジロ見られているかというのに気づかない。そういうエロっていうのがある」

──自分の性的魅力に気づいていない無垢な存在こそが、本当の「少女」だということですか。

「僕は少女のエロをそう思っているけど、法律的にタブーとなっている以上、表現として語ると抹殺されていく。そういう状況のなかで作品を作る面白さ、ですね。僕がAV監督を続けている理由は。表現に規制がある対象というのは、裏を返せばみんなが魅力を感じているということですよ。表現がはばかられるものや、人が目を背けるものって、実は誰もが見たいんです」

──演出面についてもお聞きしたいのですが、杉浦ボッ樹さん扮する主演の中年男が女の子のアナルを初めて舐めようとする際、彼女の白い靴下の裏がすごく汚れているじゃないですか。あれが素敵ですよ。

「あー、なるほどなるほど」

──多くのAVは当たり前のように綺麗な新品の靴下を穿かせて撮りますが、安達監督のリアリティへのこだわりを感じました。

「靴下に限らずパンツも衣装も含めて、使い古したものを僕は好みますね。それが日常だと思うんで」

──確かに、家ではよれよれの服を着ている方がリアル。いわゆる昭和のエロスの世界ですよね。

「昭和というのはそんなに強くは意識してないんですけど、ただ、主演の女優にあの制服は着せたかった。あれは昭和の制服で、あの制服に僕はこだわったから、結果的に昭和のテイストになったんですね。僕が一番多感な時代を過ごしたのが昭和30年代だから、そこで見た原風景が元になっていて、そっちにいっちゃったのかな」

──昭和の空気感と表現のタブーに迫る作品ということですね。視聴者の皆さんには、本作で安達かおるワールドに浸って頂きたいです。さて、ここからは、安達監督ご自身のことを伺っていきます。1986年にV&Rプランニングを設立し、黎明期のAV界に参入することになったきっかけから聞かせてください。

「AVを始めようという意識が最初にあったわけではなく、AVという世界にたまたま触れた結果、V&Rプランニングを作ったんですね。大学を出てからテレビのドキュメンタリー番組を制作する会社に10年いたんですが、そこを辞めて、映像からは引退したつもりで、別の仕事に就いたんです」

──どういう業種だったんですか?

「24時間営業のスーパーマーケットを経営したんです。そのときに、たまたまAV関係の方と知り合ったのが始まりです。僕が映像の仕事をやっていたのを踏まえて、『いま、作品が足りないんで、手伝ってくれないか』って声をかけられました。僕は面白半分っていい方は失礼だけど、まあそんな調子で仕事を受けて、実際にやってみたところ、テレビの世界で失望していたものがなくなって視界が開けたんです」

──テレビのどこに失望していたんですか?

「プロデューサーが一番偉くて、プロデューサーに貢ぎ物をしないといろいろと弊害があったという部分。そういう時代だったんですが、外注の制作会社の立場として、自分には納得がいかなかった。だけどAVというものに携わって、こんなに人間が描ける面白い世界があったのかと知ったんです。そこからのめり込んでいきました」

──美少女AVが全盛だった時代に、安達監督はSMやレ●プやスカ●ロ作品を連発してきました。特に現在撮っているのはほとんどがスカ●ロですね。いまやAVファンの間では「ウ●コ好き」の監督として知れ渡っているわけですが、監督はAVとどう向き合っているんでしょうか。

「いや、僕の性の嗜好はいわゆるノーマルですよ。いい女がいたら挿れてぇなって普通に思うようなね。さっきも言いましたけど、人間が目を背けるものは何だって考えた末にたどり着いたのが、これだったということ。たとえば万人が見て『富士山が美しい』と思う。そういうものは自分にとっては魅力がないんです。人が『え!?』と顔を背けてしまうものには何かがあるんじゃないかと」

──そういったものを撮る一方で、同時期のV&Rは、死体の映像を海外から買い付けて『デスファイル』シリーズとしてリリースしていました。あれもやはり、人が目を背けるものを見せてやろうということですね?

「うん。それプラス、どうしてそんなに死というものが忌み嫌われるのか、テレビや映画における表現として、死というものの扱いがどうしてこんなにも狭いのか。楽しく生きようっていうのは世の中で堂々と主張されているけど、『死』も考えないと『生』も浮き上がってこないんじゃないか。僕はそんなことを考えていました」

──死があっての生だと。1秒前までは楽しく生きていたのに、事故やなにかがあれば、一瞬にして「人」は「物」になってしまうわけですからね。

「戦争で死んでいく人たちの姿を映像で見せるのは教育上悪いという見解がすごく強いんですけど、実際に戦地では兵士や一般人が犠牲になっているわけじゃないですか。その姿を見せてはいかん、と遠ざけるよりは、現実を見ろという気持ちがありましたね」

──報道にせよ記録映画にせよ、死体にはモザイクがかかりますからね。

「AVも同じですよ。『お前はそんなものを見せるなんて頭がおかしいんじゃないの?』といわれるような表現に関して、僕は『何か』があると思ってこだわるようになったんです」

──「ハレ」ではない「ケガレ」のほうに魅力を感じるんですね。

「そうです」

──話が広がってしまいました。死からみんな目を背けるけど、みんないつか死ぬんだよ。排泄物から目を背けるけど、しない人はいないでしょ? ということですね。

「そう。草原を白いドレスをなびかせて走っている女の子を見て、あァかわいいって思う。けど、そのコ、パンツは汚れているかもしれない」

──あ、撮影現場の女優さんの話ですね。

「撮影再開します、ってなって新品のパンツに穿き替える。でも、その前に穿いていた日常のパンツの方を描きたい」

──ただ、そういった制作の姿勢をつらぬいていると、同業者の中ではやはり要注意人物としてマークされますよね。

「『蒼奴夢の宴』シリーズの、『南の島の蒼奴夢の宴』(1992年)では、海の中で浣腸するシーンを撮ったんですが、ビデ倫から『環境汚染だ』とダメ出しを食らいました」

──でもそこで引き下がる安達監督ではないですよね。

「そう。当時の環境庁に電話をして、『人間1人分の排泄物による海洋汚染のデータはありますか?』って聞いたら、『そんなもんあるわけない、魚が食っちゃうから』と言うんです。そういうやり取りを録音してビデ倫に提示したところ、わかりましたって納得してくれました(笑)」

──排泄物による海洋汚染には、科学的データがないんですね(笑)。安達監督は、カンパニー松尾、バクシーシ山下というAV史に名を刻む監督たちを現場で鍛えましたが、以前僕が彼らにインタビューした際、こんなことを言っていました。安達組の現場でAD(助監督)をやって、ウ●コは最初は辟易したけどそのうち平気になって、小道具の1つとして手で掴んでポイッて捨てられるようになったそうです。

「ウチに来る今のスタッフも、同じ経路でそういうふうになっていますね。最初から平気なヤツはいないですよ」

──音を上げて去っていったADは?

「やっぱりいますよ」

──長く撮り続けるうち、制作側には慣れが生まれてしまうと思います。非日常が日常になってしまうというか。それでも撮り続けるモチベーションというのは、どこから生まれるのでしょう。

「やっぱり、なんでこんなものを描くんだといわれるものを描くことの快感ですね。それがやっぱり一番大きい。そしてもうひとつ、女の子が格闘している姿に僕は親近感を覚えるからです」

──格闘というのは、ウ●コとの戦いということですか?

「そう。僕らの現場では、監督、女優、男優という関係でみんながガチンコするわけですけど、セックスとウ●コには大きな違いがあります。セックスであれば、もし女優さんが濡れなければローションを使えばいいし、テクニシャンの男優ならイカせることも可能です。だけど、ウ●コっていうのは、どれだけ女の子が頑張ろうが、1人きり。僕は自分でカメラを撮るので、出るところを撮っているときは、後ろに回り込んでいるから女優さんの顔が見えない。女の子が苦しんでいる背中ばかりを見ている。最終的には自分1人でなし遂げるしかない、誰も助けてあげられないんですよ」

──ものすごく孤独な戦いですね。監督は女優の震える肛門を凝視しながら、心の中で応援するしかないと。

「背中がビクッと震えたり、肛門が閉まったり広がったりして、苦しんでるんだろうなぁと思っても助けてあげられない。セックスだと、仮にイカなくてもイッたという演技はできるけど、出てないのに出たというふうに見せられない。だからこちらも、出るまで待つぞの覚悟です。僕たちは1時間でも2時間でも待ちますからね」

──大変ですねぇ。

「そこで女の子との戦いが始まる。頑張ろうね、って。ようやく出たときのお互いの一体感ったらないですね。思わず握手しちゃいますからね僕(笑)」

──(笑)。いいもの撮れたよと。で、女優と監督が感動している向こうでは、ウ●コをさっさとADが廃棄しているわけですね。

「クールにね(笑)」

後編では、撮影現場でのノウハウや、女優探しの苦労話なども安達監督が語ってくれます。お楽しみに!

後編はこちら→「絶対に疑似は使わない」



Profile
安達かおる

1952年東京生まれ。1974年に大学卒業後、TV制作会社に勤務し、残酷映画『ジャンク』などを手がける。TV業界の古い慣行に失望して映像の世界からいったん離れるが、知人のAV制作を手伝った縁から戦列復帰。1986年に「V&Rプランニング」を設立し、世間が眉をひそめるドキュメンタリー作やマニア向け作品を次々にリリースして物議をかもす。現在はスカ●ロにフォーカスした作品群を精力的に発表している。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


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