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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第60回 濱竜二(後編)
「女子●生は中年男を浄化する」

前編はこちら→「絶望の先に希望を見つけたい」

監督

助監督時代を経て、2012年にいよいよFAプロの監督・濱竜二が誕生。その作品世界は、濱監督がファンクラブに入っていた、80年代のある人気アイドル歌手の歌詞がベースだった。ヘンリー塚本監督とはひと味ちがう、濱竜二の「昭和のエロス」の根幹が明かされる。

──以前このページでインタビューをしたFAプロの先輩、ながえ監督は入社して1年で監督になったそうです。濱監督はどれくらい経ってから監督に?

「なかなかチャンスがなくて6年くらい助監督をやってました。最初の2年はヘンリー塚本監督につき、次の2年はながえ監督、あと2年は藤元ジョージ監督についていました」

──早く監督になりたいという意識はあったんですか?

「ヘンリー塚本監督のロケが終わると、ここ(FAプロの社屋)まで監督を車で送って、近くのファミレスでごはんを食べるというのがいつものパターンなんです。ヘンリー塚本監督とスチールカメラマンと助監督2人で。そのときに、はやく監督をやらせてほしいと何度も伝えていました」

──監督としてどんな作品を撮りたいと思っていたんですか?

「最初はやっぱりFAプロの世界観が好きだったし、それに則った企画を漠然と考えていました」

──FAプロ作品のどういうところが好きだったんですか?

「ドラマ物だというのが大きかったと思いますね。単純にSEXを撮ってるだけじゃなくて、作り手の欲求を満足させてくれるスタイルなんです。その中で、自分は何を撮ろうかというとき、基本的に恵まれてない人物を描こうという思いがありました」

──ヘンリー塚本監督が得意とするような、浮気している悪い男と悪い女という世界とはまたひと味違う着眼点ですね。もうひとつ、濱監督の作品の印象として強いのが、制服の女子●生とおじさんの並びです。これは、女子●生を好んで撮られているわけですか?

「好んでます」

──どこに魅力を感じますか?

「使い古された言葉ですけど、大人でも子供でもないというところですかね。すごく危うい存在というか」

──今、AVのユーザーの主力はわれわれ40〜50代じゃないですか。大人でもなく子供でもない、でも体はできあがっていておじさんを狂わせる存在として、女子●生はニーズがあるんですよね。

「そうですね。あとは、自分が大人になってから、現役女子●生とSEXするというのが経験としてできないので、したいなという気持ちもあるんですね」

──若いときは女子●生とSEXしていたんですね。

「中年の男と女子●生が両想いで、たとえば部屋の中で、遊びの延長ですごくこっぱずかしいことをやるようなことを台本に書きますけど、あれはまさに大学生時代の自分ですよね。浄化してるんですかね、自分の心をそこで」

──おじさんの多くはそうでしょう。おじさんと女子●生との並びは禁じられているものだからこそ、ファンタジーが香るわけですよね。

「それと、AV女優に女子●生役をやらせたいという気持ちもあります。AVの面接で女優さんたちと会う中で、無知な自分では想像もできないような人生を歩んできている人が多すぎて衝撃を受けました。こんなコがいるんだ!? って驚きの連続です。特に若い女優にそれを感じるわけですよ。かたや渋谷あたりに行けば女子●生を含めて若い女の子たちが楽しそうに遊んでいるのに、このコたちは裸になってAVで働いている。だから街の楽しそうな女子●生にオーバーラップさせて、女子●生役でAV女優を撮りたくなるんですよね」

──ヘンリー塚本監督の面接では、女優の舌の長さを重視するそうですが、濱監督の場合は?

「基本的にお尻の大きい人を好みます。おっぱいの大小にはこだわりはなく、あとは乳首の色。女子●生の制服を着てもらうので、ピンクに近いほうが純真さとかを表現しやすいので」

──今月プレイボーイ チャンネルHDで放送される「【絶望エロス】病院内SEXバトルロイヤル」でも、ヒロインが悪い男に初めて抱かれざるを得なくなったとき、『おっぱい小さいけど、現役の女子●生だから値打ちがあるよ』というセリフがありました。すごく効いてますよねえ。

「思い出しました(照れ笑い)」

──あのセリフで、現役の女子●生というものは、いかにコワモテのチンピラでも懐柔させる存在というのがわかりますからね。世の中の真実が語られているセリフですよ。

「そういうセリフがリアルに映るような、暗い背景を感じる女優さんが好きなんですよね。私は中学時代に中森明菜さんのファンクラブに入ってたんで、彼女が基本にあるかもしれないですね」

──おお、そうだったんですか。たしかに、濱監督のAVはまさに『少女A』の歌詞世界だ。

「『1⁄2の神話』だったりとか」

──まさに半分大人、半分子供を歌った昭和のアイドル歌謡。

「あのへんの歌詞からインスパイアされてることがけっこう多いので」

──影響を受けた映画などは?

「邦画を中心に見ていたんですけど、世界観として影響されているのは、NHKの佐々木昭一郎さんという演出家。この人の『四季・ユートピアノ』とか『さすらい』とかの作品でしょうか。ドキュメンタリーともドラマともつかない作品なんですよ。手持ちカメラの映像も好きで、それは東映の深作欣二監督に影響を受けてますね」

──ヘンリー塚本監督から得た一番大きいものって何でしょう。

「技術的なものより、生きざまそのものです。AV監督になる前にエジプトに石油を掘りに行ったとか、そういう話を撮影が終わってごはんを食べるときにしてくれるんですよ」

──それだけ破天荒な人物なのに、AVの現場に入ると丁寧な作品作りをするんですから面白いですね。現場で女優をいかに魅力的に見せるかが監督の仕事だと思いますが、そういった部分で注意していることや、ヘンリー塚本監督から教わったことはありますか?

「私の演出の基本は、自分が過去に会った人や経験を思い出しながら、出演者にそれをやってもらう形です。濡れ場の演出については、よく女優さんにも直接伝えていますけど、『自分自身のSEXは8級。それに対してあなたたち女優はいろんな男に抱かれてる有段者。だからそれを見せてほしい』というスタンスです」

──自分のSEXの自己評価が8級とは、また段位からかなり遠すぎる(笑)。SEXシーンについては、餅は餅屋というか、プロにお任せするということですね。

「SEXシーンで注意するのは、台本上で与えられたキャラクターからはみ出ないようにしてもらうことぐらい。ここはヘンリー塚本監督が撮影現場で厳しくチェックしているポイントで、私もそれを守っています」

──そのキャラらしくないカラミをしてはいけないということですか。

「SEXが始まるといきなりパブロフの犬のように条件反射的に大きな喘ぎ声をあげてしまう女優さんてけっこういるんですよね」

──いるでしょうねぇ。AVだから悶えなきゃいけないのね、みたいに思っている。そういうのはFAプロの現場ではダメだと。

「たとえばオナニーシーンでも、ヘンリー塚本監督は『家でやるときもこんな声出すのか?』と怒るんですよ。そういうのが自分の中に積み重なってます」

──たくさんのシーンを撮るなかで、濱監督が「この瞬間を撮りたいためにこの作品を作ったんだ」と特に喜びを得るのはどういうときなんでしょう?

「絶望を感じている女優さんが、どこか上を向く瞬間。その手段がSEXだったりするわけですけど」

──絶望があって、その先に幸せが見えているという余韻のエンディングが濱監督の作品の魅力ですね、話していてわかってきました。

「諦めるんじゃなくて、頑張れば何とかなるぜ、という人が好きなんで、そういう形にしてしまうんだと思うんです」

──自分が撮る作品に励まされて浄化されているということでしょうか?

「それはすごくあると思いますね」

──これは撮りたくないというジャンルはあるんですか?

「レ●プ物です。自分自身そういう作品が好きじゃないし、そこにエロスを感じないというか、女の子に感情移入してしまうんで、可哀相と思ってしまうんですね」

──濱監督の作品のヒロインは、悪党に弱みを握られてやむをえずSEXする羽目になります。それを可哀相と感じる視聴者もいるはずですが、レ●プとの線引きはどこに?

「暴力という部分ですね。これは受け入れられないですね。自分の中でのAVを作るうえでの良心というか、女性に対する暴力事件は、現実にも多いじゃないですか。テレビ業界で働いていた頃は、あるストーカー事件を取材しましたし、ああいうのを目の当たりにすると、自分の中の良心で暴力的なものは拒絶してしまうんですよね」

──最後に、まだ濱監督のAVを見たことのないユーザーに向けて、ひとことお願いします。

「まず、私と同世代の40代の人にはぜひ見てほしいです。同じように青春時代を過ごして、同じ思い出が共有できる人たちに見てもらいたいです」

──そうか、濱監督は現在のAV女優を使って、かつて自分が青春時代に出会った女性を再現しているんですもんね。

「自分の人生を切り売りしてるところもありますし、70年代80年代のアイドルに対して思い描く感情だったり、郷愁を感じるようなことも含んでいます」

──でも、「絶望エロス」の世界観がわかるのは、濱監督と同世代だけではないと思いますよ。濱竜二作品では、普遍的な初恋の匂いのする女の子と出会えるから、世代を超えて共感できると思います。

「若い世代にも見てほしいですね。今、レトロなものがブーム。レコードや『写ルンです』が流行りだすなど、80年代というのが今の若い人にとって新しく感じられるようになった時代なので、そういう人たちに見てほしいです。今の女子●生とはかけ離れた女の子たちを見ることで、古くて新しい映像体験ができるんじゃないかと思ってます」

──今の若い男子には、きっと新鮮に映るはずですよ。もちろん、おじさんたちは無条件降伏で勃起する。もう、全世代に見ていただきたい。

「ドラマを作るにあたって、自分が楽しかった時代を懐かしんでる部分はあると思います。だから、実はあまりお客さんのためと思って撮ったことはなくて、自分の人生が間違いじゃなかったということをAVを通して必死で訴えている気がします」

──そういう作業でもあるんですね。

「そういう作業を繰り返してる気がしますね」

──今の境遇は幸せですか?

「幸せですね。撮りたいものを撮れているのは、幸せなことです」

──今後、違ったジャンルに覚醒して撮る可能性は?

「チャンスがあれば人妻なども撮ってみたいと思いますけどね」

──どうもありがとうございました。今後の新作も楽しみにしています!


Profile
濱竜二(はまりゅうじ)

京都府生まれ。大学在学中は自主映画にたずさわり、卒業後はテレビ制作会社に入社。順風満帆にキャリアを積み上げていったが、2001年に家族の死に直面したことで人生に疑問を持つ。映像の世界から足を洗う決意をするほどモチベーションを失うが、妻の一喝で翻意し、2006年にFAプロ入社。2012年『禁●相姦小話集 家族のカタチ』で監督デビュー。「絶望の向こう側の希望」をテーマとして、2016年に「絶望エロス」レーベルを立ち上げた。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報
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