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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第35回 K*WEST(前編)
「野良猫が肉に見えた貧乏時代」
監督

映画青年は九州から上京して紆余曲折の末、やむを得ず就職した先がアダルトビデオのメーカーだった。そこで初めて「痴女ってすげェ、こんなエロがあるのか」とカルチャーショックを受け、痴女AVで精彩を放つ業界のトップ監督となったのです。

──初めまして。まず、今月は監督の撮られた『白石茉莉奈 濃密ベロキス発情エステ』(SODクリエイト)がスカパー!アダルトのレインボーチャンネルHDで放送されるんです。

「白石茉莉奈は痴女をやるのが苦手だったんです。でも、これの前に僕が彼女で撮った『性感エステ×フルコース』(SODクリエイト)で『痴女みたく迫っていくのが楽しいと初めて思いました』といってくれたので、この仕事のオファーにつながったんです」

──もともとガンガン攻められるのが好きなM女ですもんね。

「ええ。でも、キスがもともと好きといっていたので、そこに特化して、ねちっこく迫ってもらいました」

──攻めに転じても癒し系なところが魅力ですよね。

「上からじゃなく下から迫っていくような感じが白石茉莉奈の魅力ですね。エステでの癒し、おもてなし、攻めのセット。彼女ならではのエロさが出ています」

──ありがとうございます。さて、監督は岡山出身で、大学時代は九州で過ごされたんですね。

「両親が映画好きだった影響で、僕も父親がVHSでテレビの映画を録画したやつを子供の頃から勝手に見ていたんです。そのうちいつか映画を作りたいなと思うようになり、大学で映画研究会に入ったんです」

──なんでまた九州の大学を?

「福岡が両親の出身地で、僕も好きな土地だったんですよね。東京に憧れてたんですけど、大学を出てから上京しようと思ってたんです」

──将来、商業映画を監督するデビュー作はどんな作品を具体的に考えてました?

「血の気の多いチンピラが暴れ回るような、男の友情を描いたアクション映画みたいなものを撮りたいと思ってましたね。あと『ロッキー』が好きで、みじめな男がヤケクソになるのか前向きになるのか、そういうのを撮りたいと思ってました。まさに僕自身がそんな感じで、学生時代だらだらやってたので、僕みたいな男が見て元気になったり勇気を持ったりできる映画を撮りたいと当時は思ってました」

──4年で卒業したんですか?

「いえ、何本か映画は作ったんですけど、単位を取り損ねて、4年通って中退しました。5年も6年もいくのは親も勘弁してくれっていうし、申し訳ないので。でも、就職しようとは思ってなかったんです。自主映画やっていた関係で知り合った人も東京にいるし、上京しようと決めたんです」

──ご両親に、オレ東京いくといったら?

「勝手にしろって感じ。戻ってこいともいわれなかったし、こいついうこと聞かないなと思われてたんでしょうね」

──僕も田舎育ちですけど、やっぱり田舎者は、一度は東京に憧れますよね。

「ちっちゃい頃から東京に出たらなんとかなるだろう、ビッグにもなれるだろうと考えてた典型的な田舎のクソガキでした。で、東京に逃げてきたみたいなところもありましたね。当時つき合っていた彼女と一緒に、まず名古屋で季節工として働いたんです。住宅メーカーで外壁作りとか、業務用の椅子組み立てとか。寮に入って、そういうところに派遣されるんです」

──なんで名古屋?

「アルバイト情報誌に、短期でお金をいっぱい稼げますと出てて、それが名古屋だったんです。そこを経由して東京出ようみたいな。でも、お金を貯めて東京に出てきて、結局彼女と別れました。彼女は九州に帰っちゃったんです」

──東京に来て、まず何を?

「普通のフリーターです。ドン●ホーテとか、工事現場でアルバイト。その間に自主映画を撮ったり、先に上京してる仲間の自主映画に出たりしてたんですけど、それじゃ生活できないんですよね」

──家賃は?

「最初は6万円の、8畳の1K。で、彼女と別れて、アルバイト代もそんなにない、もっと安いとこに住もうと、四畳半の風呂なしにまでいきましたね。三鷹台の2万8千円の部屋。そこに3年ぐらいいました」

──僕も20代の頃、三鷹台に住んでましたよ。

「今、あそこにいくと胸が苦しくなりますね。一番つらかった時期です。アルバイトしてても、何でかわかんなかったですけど、すぐ帰りたくてしょうがないんですよね。もうやりたくなくて、8時半にいったら9時過ぎにはもう帰りたくなるんです。いかなかったりするときもあったし、結局、日雇いの肉体労働みたいなのをやって、最終的にはほんとに働きたくなくて、引きこもったんですよ。やりたくないことはやらねえって決意して、どれだけやらないでいられるかやってみたんです」

──何を食べてたんですか?

「スパゲティの麺に100円のタラコのソースとかを混ぜて食ってました。家賃払わないといけないけどお金も尽きて。あるとき近所を歩いてたら野良猫が横切ったんです。スパゲティばかり食ってたから『肉だ。捕まえたら食えるんじゃねえか?』と思ったんですよ」

──猫を見て久しぶりのタンパク質だと!

「そうとう腹減ってたんでしょうね。そのときに、ヤベぇなと思った。もうダメだ、こんな生活やめようと」

──で、どうしようと?

「田舎に帰ろうとは考えもしなかった。就職することはカッコ悪いとずっと思ってたんですけど、あきらめて就職するしかない。バイトで中途半端にやりたくないことをやるよりは、やりたいことやって食えるようになろうと思って、就職情報誌を買ってきて、『株式会社ワープエンタテインメント』を見つけたんです。そのとき載ってた唯一アダルトビデオのメーカーだったんです。AVはあまり見たことがなかったんですけど、面白そうだなと思ったんです」

──2001年ですよね。そのとき何歳?

「24〜5歳ですね。沢庵(監督)が3歳下で4月に新卒で入って、僕は2ヶ月遅れの6月。たぶん沢庵と同時に入った人がやめて、それの補充だったと思います」

──映像に関われるということも応募した理由?

「そうですね。エロビデオだったらすぐ監督になれるんじゃないかなという甘い考えがありました。自主映画をやってたとき、編集が楽しくて、編集だったら一晩や二晩徹夜しても苦しくなかったんですよ。別々に撮った画がつながったりするとすごい気持ちよくて。そういうことを面接の場でアピールしたのを憶えてますね」

──編集が好きだったんですね。

「ワープに入って編集をやり始めたら、あっという間に時間が過ぎるんですよね。当時はDVDが出始めた時期で、VHSの素材を再編集して特典映像を作ってたんです。自分はやっぱこういう仕事が好きなんだと思いましたね。そこで『ドリームシャワー』と、『「痴」女優』を初めて見て、カルチャーショックを受けたんです」

──ワープ初期の2大看板シリーズ。

「『ドリームシャワー』の顔面ぶっかけと、女が男に乗っかるという『「痴」女優』の痴女っていうのが衝撃的で、こんなエロがあるんだ!? ってビックリしましたねぇ」

──沢庵監督にこの連載で聞きましたが、ワープは企画書を書いてOKをもらえないと監督になれないんですよね。

「制作部で企画会議をやるんです。書いてプリントアウトした企画書を出さないといけない。人数分コピーして配って、制作部員全員で最初に企画書を読んで、その中から選ばれたら監督できるんですよ。質疑応答があって、挙手の多数決で採用が決まるんです。今思えば、ものすごくいい会社入ったなと。キャリア関係なしで、企画書が通れば監督になれるんですから」

──晴れて2002年の監督デビュー作は、どういう企画を練って通したんでしょう。

「『裏☆淫語』という渡瀬晶ちゃんの作品です。男がいわされる淫語ってどんなもんだろ? と思ったんですね。女が恥ずかしい言葉を男にいわせて辱めるんです」

──ワープのぶっかけ物と痴女物に衝撃を受け、痴女に覚醒したK*WEST監督の快進撃がここから始まるわけですね。続きは後編をお楽しみに!


Profile
K*WEST(けいうぇすと)
1973年岡山県生まれ。映画監督を目指し、大学の映画研究会で自主映画の制作に励むが、卒業後は期間工やアルバイトを転々とする。いよいよ窮乏した2001年、AVメーカー「ワープエンタテインメント」に入社。翌年に監督デビューを果たし、多くの痴女作品で実績を積む。2006年にTOHJIRO監督率いるドグマへ移籍し、その後、フリー監督となる。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報
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