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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第30回 バクシーシ山下(後編)
「イケない嫌なSEXもSEXのうち」
監督

──大学4年のときにV&Rプランニングに入ったわけですね。

「そうです。ゆくゆくは正社員にといわれて」

──就職に関してほかの選択肢はなかった?

「何も考えてなかったんですよね。で、この頃にはもうV&Rプランニングが業界内でどういう位置にいるかがわかってきたんで、この話に乗ってみようかと」

──美少女系は宇宙企画、SM系はシネマジックなどなどと、把握してたんですね。

「そうです。この奇妙な会社が面白いんじゃないかと思って入りました。でも、大学を卒業するのに6年かかってしまったので、入社1年半で初めて監督になったときはまだ学生でした」

──山下監督の初監督作品といえば『女犯』ですが、あれを撮ったときは学生だったんだ! 1作目から過激なレ●プシーンで注目されたわけだけど、あれはどういう経緯で? 何を撮りたいのかと会社からいわれて山下監督が出した企画なんですか?

「いや、逆です。当時、伊勢鱗太朗監督(詳細は当バックナンバーを参照)が撮っていたレ●プ物の枠があったんだけど、伊勢さんはKUKIがメインで忙しくなって、ウチの仕事をあんまり受けてくれなくなったんです。だからそのレ●プ枠をやってくれといわれたんですよ」

──単純な理由だったんですね。『女犯2』は、もう本当の強●にしか見えないということでフェミニズム団体から抗議が来て話題になりましたよね。

「それも発売してだいぶ経ってからのことなんですよ。すごい量の抗議文をFAXで送りつけてくるんですけど、特にこちらとしてなにか対応したわけではなかったです」

──女優が訴えてるわけではないからね。

「そのうちに、向こう側が内紛を起こして、自滅した格好でフェードアウトというか」

──伊勢さんがV&Rで撮った『侵犯』(1987年)などにも負けない迫真のレ●プの演出技術は、どうやって培っていったのでしょう。

「どうしようと考えるうち、男を騙せばいいんじゃないかという方法論に落ちついたというか、それしかないなって。女の子を味方につけて、男にだけ本当にレ●プしてるって思わせてやらせればリアルになるんじゃないかって」

──なるほどねー。

「女の子には『こういう男が出てくる、そしたらこういうリアクションしてね』って伝えてあるからすべてを知ってる。でも、遊園地のお化け屋敷と同じで、お化けが出てくるとわかっていても、いきなり出てきたらビックリしてギャーッてなるじゃないですか」

──しかも、その男優が、いかついゲロ吐きぶっかけのポンプ宇野だったりするわけだからね。

「そう。そこで問題になってくるのがポンプ宇野なんですよ。宇野さんだけはレギュラーで出てるから、演出の手口を知っちゃっているんです。もともと女好きだから、犯しながらも手を握って『安心しろ』とか耳元で囁いちゃってるんですよ」

──宇野さん、そんなのは要らないから。

「ほんとに要らない!(笑)カッコつけるなと。だから宇野さんを本気で怒らせようと思って、わざと待ち時間を長くさせたりするんです。待つのを我慢できない人だから、早く現場に呼んで4〜5時間待たせておいてから宇野さん出番ですって呼ぶと『こらァ! いつまで待たせるんだ!?』って来る。で、『こらァ!』のとこで切って、『いつまで待たせるんだ!?』を編集でつまんで」

──ははははは。女にではなく、待たされたことに対する「こらァ!」なんですね。

「だからほかの男たちは毎回変えてたんですよね。だから、『本気でレ●プしてほしい』って頼まれて『本当の強●だからこれはまずい』ってビビって現場から逃げる奴もいました。証拠が残らないように吸殻まで持ち帰ったりして(笑)」

──女の子には、宇野さんがゲロ吐いて顔にぶっかけることまで伝えてあったんですね。

「そうです。『女犯』シリーズも5とか6あたりになると、『女犯』を見たことがある女の子が現れて、ゲロ吐かれることも説明しなくてもよくなったりしました。あと、失敗することもあって、『最後まで抵抗して』って伝えてあるのに挿入されるとあンあン声を出す。何度注意してもあンあンいい始める根っからのスケベなので、結局作品をボツにしました」

──オクラ入り?

「当時は売れてたからそれくらいできる余裕がありましたね」

──最初に監督になるとき、好きなものを撮っていいといわれたらどんな企画を出してました?

「名もない女の子を撮りたいというのはありました。あの頃は芸名のないコが多くて、本名で面接にやってきて、その場で芸名を決める。そういうコのドキュメンタリーというか、生活やSEXが撮れればいいなと漠然とした考えはあったんですけど、それをどんな企画でとまでは考えなかった。そもそもAVってパッケージありきな部分があるじゃないですか」

──うん。内容が殺伐としたものでも、“青姦でギャル18歳潮吹き大昇天"みたいなキャッチコピーだけを売りにするようなね。

「お客さん向けに売れるテーマというものを誰かに考えてもらって、中身だけこっちに投げてもらうというのがベストなやり方だったですね、V&R時代は」

──やはり、最初からメーカー専属単体女優などには興味なかった?

「なかった。『有名になるために頑張ります!』ていうような人より、間違ってAVに出ちゃってやめたいっていうような人を撮りたい。タレント志向があるコが、カラミを撮る前に『どこでイッたらいいんですか?』みたいにいうとキツイですね」

──イカなければイケないでいい、真実を撮りたいってずっといってますよね監督は。

「イカなければイケないでいい、真実を撮りたいってずっといってますよね監督は。」

──ポンプ宇野や観念絵夢といった、女性が生理的に嫌がりそうなタイプの男優を好んであてがうという醍醐味はどこに?

「なんだろうなー。ああいう人たちに対する女性の反応、嫌悪感が本物っぽく見えるからかもしれない。それは、あの釧路のソープランドで培われたもので」

──あー、ここにつながるわけだ。

「僕に見せたあの嫌悪感こそ女の真の姿だともいえますよね。だけど、そんなに嫌がっているのに、SEXはする。仕事だからするし、そういうSEXもまたSEXなんですよ」

──やがて、身体障害者を男優に起用したり、男優が仮性包茎の皮を手術で切ったものを女優に食わせたり、女優が手術で吸引除去した脂肪でラーメンを作って食わせたりしてビデ倫から発禁沙汰を食らうこともしばしば。

「時代の影響もあるんです。美容整形外科がチェーン展開し始めた頃で、彼らはタイアップして宣伝したいので、手術物を撮らせてくれるというんです。どうしたら面白いかを考えているうちに、じゃあ食っちゃおうか? って思った。あの頃はV&R作品が注目されていて、毎回現場に雑誌などの取材が入ったんですよ。取材の申し込みは原則受けるという会社の方針もあった。そうなると現場サイドも、もっと派手にやったほうが喜んでもらえるかなって思ってエスカレートしちゃうんですよね」

──1996年にフリーになってからも、名作『めちゃイケてる飲尿娘』(h.m.p/1997年)ではV&Rの作品でおなじみ飲尿おじさんを起用してましたよね。前出の宇野、観念といった個性的でおかしな人たちが好きなんですか?

「こんなキャラクターの人はめったにいない、記録しておかなきゃいけないという使命感があったんですよ。で、誰かが作品を見てその人の存在価値とか意義を語ってくれればいと。僕は記録っていうことができればいいと」

──AV監督業をやっていて一番楽しかったことは?

「女の子の住んでる部屋にいって、いろんな話を聞いて撮影できたというのがすごく面白かったですね。それをさせてくれる女優が、昔はいたんですよね」

──1990年代後半から始まったジャパンホームビデオのエロチカレーベルの『「ひとり暮らし」の女たち』シリーズですね。やっぱり女の子の部屋って好き?

「大好きです。部屋を撮ることによって、置いてある物などから女の子が見えてくるし、本人の部屋で話を聞くと素の部分が見える。あるときは、椅子も何もない部屋に脚立が置いてあって、何に使うのか聞いたら『これがないと蛍光灯を交換できない』って。さらに亀もいた。亀は『飼ってるわけじゃなくて、人からあずかってるけど連絡取れなくて』などなど」

──町で暮らす娘の真実の姿ですね。本当に面白いシリーズだった。

「今はそういう企画が通る枠がどこにもないから、撮らせてもらえないですね」

──現在山下監督は、ルビーとセンタービレッジで熟女物を主に手がけているわけですが、熟女物を撮る楽しみはたとえばどういうところにありますか。

「今に通じる過去がちゃんとエピソードとしてあったときなどは、いい物が撮れたなと思います。以前撮った77歳の超熟女の人がいて、『キスが好きじゃない』って。なぜかと聞くと、終戦を満州で迎えて、進駐軍が来て、アメリカ兵が家に入ってくる、当時9歳の彼女に性的な目的で無理やりキスしようとしてきて、そこからキスが嫌いになったっていうんですよね」

──小娘からは得られない話ですねぇ。そういう熟女との出会いも楽しいということですね。

「与えられた企画を楽しめてやれればいいなと思ってます」

──どんなジャンルでもバクシーシ山下の語り口は変わらないですからね。今日はありがとうございました。これからも作品で楽しませてもらいます!


Profile
バクシーシ山下(ばくしーしやました)
1967年岡山県生まれ。大学在学中、テレクラでのアルバイトをきっかけに、V&Rプラニング作品で男優デビュー。同社に入社後はガチレ●プにしか見えない衝撃的作品『女犯』で監督デビュー。世の良識派が眉をひそめる問題作を連発し、狂気のAV監督として名を馳せた。現在は主に熟女AVのフィールドで活躍中。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報
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Back number
第102回 代々木忠(後編)「さらけ出してくれてありがとう」
第101回 代々木忠(前編)「愛染恭子との偶然の出会い」
第100回 芳賀栄太郎(後編)「熟女AVは朝イチがキモ」
第99回 芳賀栄太郎(前編)生保に入って外交員をキャスティング」
第98回 安達かおる(後編)「絶対に疑似は使わない」
第97回 安達かおる(前編)「人が目を背けるものを撮りたい」
第96回 ボトムズ(後編)「SWITCHの頭に込めた大きな秘密」
第95回 ボトムズ(前編)「ブルマ作品の複雑なルール」
第94回 赤羽菊次郎(後編)「ヘンリー塚本の台本なら撮ってもいい」
第93回 赤羽菊次郎(前編)「葬儀屋さんにちなんであの巨匠が命名」
第92回 YUMEJI(後編)「おじさんたちに夢の国を見せたい」
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第90回 薄刃紫翠(後編)「四つんばいのヒザを巡る対立」
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第88回 九十九究太(後編)「タカラ映像だからこそできる表現」
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第84回 貞邪我(後編)「ドラマを支えるオリジナルBGM」
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第82回 春童(後編)「川上ゆうのSッ気に戦慄した瞬間」
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第80回 馨(後編)「専属単体女優の縛りを超えた撮り方」
第79回 馨(前編)「いつか辞めるはずだったのに」
第78回 なぎら健造(後編)「言葉よりも女心を雄弁に語るもの」
第77回 なぎら健造(前編)「女性が共感できるレ●プドラマ」
第76回 DUKE(後編)「あの子はどんなSEXするのかな?」
第75回 DUKE(前編)「長続きしたのは桃太郎の仕事だけ」
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第72回 菅原養史(後編)「人妻の浮気SEXのリアルを実地調査」
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第31回 沢庵(前編)「チ●コに靴下をかぶせてプレゼン」
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第29回 バクシーシ山下(前編)「若き日のSEXトライアスロン」
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第27回 梁井一(前編)「後ろ指をさされる仕事に惹かれた」
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第14回 伊勢鱗太朗(後編)「シナリオ教室の教えの逆をいく」
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