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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第27回 梁井一(前編)
「後ろ指をさされる仕事に惹かれた」
監督

ディレクターの個性がそのまま作風になるという当たり前の世界が、ハマジムのAVにはある(当連載のカンパニー松尾タートル今田監督の回に詳しい)。メーカー専属の女優を起用したシリーズ作品を担当する多くの監督は、ときに「個性」を抑えざるをえない。梁井一も始まりはSODクリエイトの社員監督だった。彼は、カンパニー松尾との運命的な出会いにより人生の航路を変える決断をし、見事チャンスをものにしたのだ。

──ユーザーが決めるアダルトビデオ日本一決定戦こと「AV OPEN 2015」。今年のハマジムの出品作は梁井監督の『どついたるねんライブ 横山夏希』になりました。

「もともと、『どついたるねん』というバンドが好きだったので、彼らのライブを撮りたいという気持ちがあって、その会場でAV女優と男優のSEXをリンクさせれば? って思って企画を出したら通ったんです」

──もともと音楽好きだったんですよね。子供の頃、最初に憧れた職業って何でした?

「そういうのがなかったんです。自我のめざめが遅く、中学高校と平々凡々と過ごしてきて、大学に入ってからは、勉学にいそしむタイプではなく、気の合う仲間の部屋にみんなで溜まって、いろんな音楽を片っ端から聴いて、『バンドやろうか?』なんていったりしてました」

──好きな女の子には積極的だった?

「いや、昔も今も基本的にはシャイです。チューをしたのは中学生ぐらいだけど、初めてSEXしたのは二十歳ぐらいですから」

──それはつき合った彼女と?

「そうです」

──好きなAV女優がいてレンタルして見ることは?

「AVはちょこちょこ見てたけど、好きな女優はいなかったですね」

──特にオナニーのおかずにしていたものは?

「カンパニー松尾さんのハメ撮りが一番でしたね。エロい女性しか出てこないし」

──それで、オレもカン松のようなハメ撮り監督になろう、と?

「いえ、僕なんかおこがましいです(笑)。AV監督になろうと思ったのも大学4年になって就職活動を始めなきゃって思ってからなんですよ」

──AV監督業に惹かれた理由は?

「面白そうだなとか漠然としたものです。出版社の説明会なんかも覗いたりしたんですけど、後ろ指をさされるような仕事が面白いなって惹かれたんです。ネットでSODクリエイトの求人広告を見つけて、名前はもちろん知ってるし、受けてみたんです」

──でも、かなりの倍率を勝ち抜いて合格したからには、ちゃんとした熱意をもって臨んだわけですよね。

「そうですね。SODは毎年すごい数の受験者がいるんですけど、冷やかしとか、ちょっと話のタネに、みたいな人が多いんですよ。僕のときも、真面目に本気で働くつもりですといい続けてた奴が最後まで残りましたね」

──この連載に登場してもらったSODの野本義明監督もいっていましたけど、最初AD(助監督)をやって、徹夜続きが当たり前な過酷さにほとんど辞めていって、同期で残ってるのは2人だと。

「僕は野本さんより2年後輩で2006年入社なんですけど、11~12人入って、今残ってるのは2人です」

──しんどいから辞めようとは思わなかった?

「思わなかったんですよ。それが当たり前だと思ってたし、すべての経験が目新しくて楽しかった」

──場を楽しめる性格、そういう長所があったんですね。

「文句いってる奴が多かったけど、僕は文句いわなかったですね。こういうもんだ、って状況を受け入れてしまうところがある。基本、のらりくらりしてるボンクラなんです(笑)」

──でも、頑張れば監督になれるという目標が揺るがなかったから耐えられたんですよね?

「そうですね。でも、監督になりたい奴は企画書を書けっていわれて書いても通らなかったんですよ」

──どこに原因が?

「もともとAVの素養があったほうじゃないんです。周りを見ると、本当にAVが好きで大学時代から見まくってるような人が入社してるけど、僕はそうじゃなかった。作品的に面白くて衝撃を受けたのは、カンパニー松尾さんとか、バクシーシ山下さんで、古いVHSテープを発掘して買いあさっていました。だから、女の子を追ったドキュメントの企画ばっかり出してたんです」

──旧V&Rプランニング勢の影響を受けた1人だったんですね。

「自分が撮りたいってなると、そっちのほうになるんですよね」

──監督デビューは2009年。センセーショナルな作品「大塚咲『ウチの嫁さんはAV女優です。』」でした。この作品の成り立ちは?

「大塚咲が旦那さんと一緒に営業に来たんです。事務所経由で。『私じつは結婚してて、そういう話をAVで~』って。僕の上司だったプロデューサーが、だったら梁井やるか? って」

──ドキュメント物だから?

「そうです」

──大塚咲にカメラを渡して夫婦のSEXを撮ってもらって、さらに旦那の前でAV男優2人と3P。当時のSOD作品の中でも異彩を放ってました。

「あれを撮ったことがきっかけで、『ビデオ・ザ・ワールド』(コアマガジン)の『山松対談』(バクシーシ山下とカンパニー松尾のトーク連載)にゲストとして呼んでもらえたんですよ」

──そうでしたね。今はなき『ビデオ・ザ・ワールド』に、SODの社員監督として登場していました。あの場がカンパニー松尾と初対面?

「本当の初対面はあのちょっと前なんです。松尾さんを招いて『原紗央莉とのハメ撮り物を』という企画をSODで撮ってもらうことになって、そのときです」

──『芸能人 原紗央莉 brown eyes』(2009年)ですね。

「そうです。プロデューサーから『お前、松尾作品好きでいっぱい見てるんだよな? 打ち合わせに松尾さんが来るから一緒にいてくれよ』っていわれました。松尾さんとはそのとき初めて会ったんですが、『松尾さんのあの作品もこの作品も見てます』なんて話をしていたのを憶えていてくれたこともあって、山松対談に呼んでもらえたんです。そのときはそれっきりだったんですけど、あるとき松尾さんから電話があったんです。『ハマジムで働かない?』って」

──へーえ。

「社内で配置替えがあって、ディレクターの欠員が出たんですよね。もう1人必要だって」

──梁井作品を見て、コイツは使えるって思ったから?

「いや、僕のAVは見てないと思います。人として、コイツは一緒に働けるなと思っていただいたんだと思います」

──SODを辞めようと決めた?

「はい。会社に伝えたら、僕のことを大事にしてくれてたんで『ちょっと待て』っていわれたんですけど、松尾さんが社長に挨拶しにいって、筋を通してくれたんです」

──そこから『劇場版 テレクラキャノンボール2013』の公開で注目されて、「AV OPEN 2015」のハマジム代表に至るわけですが、今月のスカパー!アダルトでは、梁井監督の『AV女優の裏側リポート かたりたがーる 青山未来』が放送されるんですよ。

「沢木さん見ました?」

──見ましたよ。あんなすげェ生い立ちが彼女の口から語られるとは思わなかったのでびっくり。首締められて絶頂を迎えるハメ撮りの数々も含めて、青山未来の魅力が今までで一番出てる名作。

「ありがとうごさいます。最初は、個性が強すぎてモンスターみたいに見えるんだけど、最後のほうは普通の女の子に見える。ああいうありままの姿を撮れて納得できた一作ですね。SEXになると、思っていた以上にわがままなコでいろいろ大変だったけど(笑)」

──察します(笑)。梁井監督のAV女優に対するスタンスなどがよくわかる作品なので、皆さんぜひご覧ください。ということで、後半は、ハマジム入りして環境が一変した話からお届けします。


Profile
梁井一(やないはじめ)
1983年生まれ。カンパニー松尾作品ばかりでオナニーする少年時代を送り、大卒後、SODクリエイトに入社。監督した異色作品「大塚咲『ウチの嫁さんはAV女優です。』」をきっかけに、カンパニー松尾監督の目にとまり、ハマジムへ移籍。現在は、同社の若手ホープとして期待を集めている。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報
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