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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第15回 ペヤングマキ(前編)
「むっつりスケベだったんです」
監督
演劇ユニット「ブス会*」を主宰する脚本・演出家・ペヤンヌマキことAV監督・ペヤングマキは、演劇界からもAV界からも注目を浴びる稀有な存在だ。AV監督・平野勝之の映画作品『監督失格』でも重要な役割を果たしている。

──今日はまず、長崎県で生まれ育ったペヤングさんと演劇との出会いから教えていただきましょう。

「小学校のときに地方を回る子供劇場の芝居を親に連れていってもらって、舞台って面白いなって感じたんです。実際に自分が始めたのは中学校の演劇部に入ってからで、並行して演劇関係の本も読むようになって。演劇関係は早稲田大学出身者が多いって知ったので、自分もいずれは早稲田で演劇をやるんだ、と頭の中で筋道がインプットされたんです」

──演劇をやりながら早稲田を4年で卒業して、「シネマユニットガス」(AV監督高槻彰代表のAVメーカーで、当時は制作会社。かつて平野勝之監督も在籍)に入るわけです。なぜAV方面へ?

「平野監督の『由美香』と『流れ者図鑑』の映画版をビデオで見ました。AV版のは見てなかったんですけど、面白かったんです、AV監督の人が撮った映画が。それを見たのと、バクシーシ山下さんの『セックス障害者たち』を本屋で見つけて読んで、AVの世界って面白そうだなと思いました」

──どういうところに面白さを感じました?

「今まで見たことない人がいっぱい出てくるんです。人間描写が面白かったし、演劇をやってたときから人に興味があったので。大学で4年間演劇をやって、卒業して1年間フリーターやりながら演劇をやろうとしてたんですけどお金が限界で、このままだとバイトだけで終わってしまいそうになるなって。それで、平野さんが気になっていたタイミングで、インターネットでシネマユニットガスっていう会社の『編集スタッフ募集』を見つけて、映像編集の勉強にもなるし面白そうな世界も覗ける、一石二鳥だと思って応募したんです」

──それで、編集スタッフどころか、平野組、高槻組のAD(助監督)までやらされ、その役どころで出演もさせられた。あれは楽しんでやってました?

「いや、自分にカメラを向けられることにはずっと抵抗があったんです。撮影は楽しかったんですけど、作品のキャラクターの1人として登場させられることがすごく嫌だったんです」

──ガスのAVというか高槻、平野の作品は、ドキュメンタリーだから女優男優と同じようにスタッフも出演者になるのは当然という前提で始まっていますからね。

「自分的には特殊な世界を覗き見している気分でいたから、女優さんの面接のときに『乱交した』『3Pした』とか聞いて『そんな世界があるんだ、すごいですねぇ』っていってたんですけど、高槻さんに怒られたんです。『すごいですねじゃねーよ、お前は高みから見てる感じがして気に食わない』みたいに。『そういうときは自分もやりたいですっていうんだよ』って叱られて』

──高槻監督らしいね(笑)。

「そこから変わっていったというか、変わらなきゃっていう強迫観念があったので。ガスはAV業界の中でも特殊な会社だったと思うんですけど、やっぱり自分だけ何もせずリスクを負わずにドキュメントなんて撮れない、参加していかないと、って。それで、だんだんこんな自分でもちゃんとキャラクターとして成立するっていうことや、自分の特技なんかがわかってきたんです」

──発見したものとは?

「平野さんも高槻さんも、ほんと個性的でキャラクターがしっかりしている。自分は存在感がないしダメだと思っていたんですけど、平野さんにインタビューをされると心を閉ざすような人が、私が相手だとフランクに喋ってくれるんですよ。それがどんどん楽しくなってきて」

──カメラを持って1パートを担当するようになりましたもんね。でも、演劇をやるためのバイトだったはずのAV仕事に、何でそこまでのめり込めたのでしょう。

「真面目な高校生で、受験して早稲田に入ってそのまま演劇にいった私の周りは、みんな真面目なんです。1ヵ月毎日同じ場所で稽古するんですから、演劇って真面目じゃないとやれないです。だから、大学生活を謳歌せずに演劇だけをひたすらやっていて、ちょっと特殊な世界への憧れもあったんです。けっこうむっつりスケベだったんでエロ業界に興味があったんですよね」

──初めて触れたエロいものって何でした?

「お父さんが隠し持ってたエロ本です。『プレイボーイ』とか『週刊大衆』とかに載ってた劇画タッチのマンガがすごい好きになって。エロの嗅覚があったんです。お父さんがエロ本をトイレの高い棚の奥にたくさん隠してたんですけど、すぐ見つけちゃう。なんかいかがわしいものを察知する能力があったんです。そこから始まって、お父さんも時代によって進化してて、VHSのテープを入手し始めて、お父さんの進化とともに自分のエロネタも進化していって。最初はたぶん小学校高学年のころで、中学高校までずっと」

──VHSで見たAVとは?

「始まりが洋ピンなんです。近所の電気屋のおじちゃんから仕入れたような手書きのタイトルの。プールサイドみたいな所で金髪の男女が喋ってて、次の瞬間に暖炉みたいな場所でいきなりやってる(笑)」

──無修正の?

「いきなり無修正でした(笑)。そのあとに日本のAVを見たら、なんてソフトなんだって思いました」

──それでついに東京でAV監督になるわけです。

「ガスに入って4年ぐらい経ってからですね。あんまり、こういうものを撮りたい、監督になりたいっていう動機で入らなかったので、お前何がやりたいんだっていわれてて」

──ディレクターとしてどんなもの撮りたいかと聞かれて何て答えてました?

「答えられなかったですね。どういうものがエロいって思うんだ? て聞かれても、ちょっとわかんないし」

──こういうのがエロい、と言葉にできなかった?

「そうですね。しいていうなら、オヤジ向けの劇画タッチのエロマンガのハード目なレイプっぽい感じのものが好きっていうのはありました、ソフトなやつより」

──でも、最初はレズ物でした。

「監督になったきっかけがレズブームのときでした」

──AVの女流監督のデビュー作がレズ物というケースは多いですよね。でもレズに興味はなかったんですよね?

「興味なかったんですけど、レズナンパという企画でナンシー(万能女優)と出会ってガチでナンパしてたら、だんだんナンパが上手くなってきて、楽しくなってきちゃったんです」(※後編に続く)


Profile
ペヤングマキ(ぺやんぐまき)
1976年長崎県出身。中学生のころから演劇にのめりこみ、青春時代を稽古に捧げた。大学卒業後はシネマユニットガスに入社し、高槻彰、平野勝之などの異才監督の薫陶を受ける。現在はAV監督業の傍ら、演劇ユニット「ブス会*」を主宰し、第59回岸田國士戯曲賞最終候補に残るなど演劇界での評価も高い。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報
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