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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第14回 伊勢鱗太朗(後編)
「シナリオ教室の教えの逆をいく」
監督

──あまり知られていませんが、日本のハメ撮りAVの第1号『勝手にしやがれ』(1988年)は、伊勢さんの手によって登場しています。

「もう、疑似本●の男優と女優のカラミを撮るのがかったるかったから、ああなったわけ」

──疑似の濡れ場は撮っていてつまらない?

「KUKIで撮り始めた初期から疑似のカラミを撮るのが面倒くさくてしょうがなかった。第三者的に男優が腰を振る姿を見ているのがつまんなくなって、男優を映さずにカメラがSEXしてる感じで撮ったほうがいいだろう、というので始まったの」

──編集物の『勝手にしやがれ』は、過去作品で1コーナーあったマンツーマンの主観の会話からSEXまでを集めたものですが、撮り下ろし映像もあったんですよね?

「そう、ほかの現場で撮ったけど収録していなかった映像。やり始めたころはカメラとデッキが別のセパレートだったから、もう重くて男優は持ってられなかった」

──そうか、8ミリビデオが出る前だ。で、ハメ撮りは、女優のカメラ目線のトークが新鮮だなぁと思いました。

「とりあえず売れてる女優も出てくるから、意外な素顔というのが見えてくる。そこがよかった」

──単体女優にきっちりインタビューするというのも伊勢さんがハシリだったように思います。『危険な情事』(1987年)のようなドラマ物でさえ、突然インタビューシーンの1コーナーが始まる。

「宇宙企画の美少女物が王道だった時代で、宇宙企画みたいなイメージ物で全編押し切るのもいいけど、出演者が現場で和んでいる素顔って絶対見たいんじゃないかって思ったから始めたんだよ」

──すべてがシンプルな理由から始まっているわけですね。ともあれ人気女優の素顔。清純派が意外とヤンキーぽかったり、ギャル系が礼儀正しかったりというギャップが新鮮だった。

「あと、芝居に関してはアマチュアだから、ドラマだけで通して90分見せるのは難しいわけ。そこでインタビューシーンで目先を変える。CMタイムみたいな」

──あと斬新だなぁと思ったのが、場面と全然関係なかったりするテロップ。

「これ、どういうこと? って注目してくれるでしょ」

──普通の女教師物なのに『チェルノブイリの事故の背景には……』とか(笑)。

「そのときどきの自分のブームを入れる。あのロシアの原発事故以降は一時期、陰謀論の研究にハマったから」

「そういうことだよね」

──その後、伊勢さんはダイヤモンド映像、芳友舎(現h.m.p)と移籍して、AVがセル主流になってからソフト・オン・デマンドやムーディーズなどの大手でも撮っているわけですが、常に好きなことをやれていますよね。プロデューサーたちが、KUKI時代のカルト作品を見て、ああいうのをぜひ、と頼んでくるわけですか?

「いや、だいたいこっちから提案する。スタジオで撮るのは息が詰まるから2泊3日で佐渡ヶ島いって撮りましょうよ? とか」

──いきなり主演女優に「チェルノブイリ、ニガヨモギ」と喋らせたり。すげー前衛的って思った!

「伝えたいメッセージを喋ってもらっただけだよ」

──テロップで感心するのは、いきなりラブホテルで濡れ場から始まる際に『この男は公金横領犯で別に愛人がいるが、ここにいる豊満な娘は自分が二号であることを実は知っていた』とか。一枚の映像の中にものすごい情報量を詰め込むことが可能なんだって発見させられました。

「映画の場合、テロップはほとんどないじゃない? せいぜい『1年後』とか」

──テロップで説明するな、映像で語れ、というのがシナリオ教室の教えですからね。

「そうそう」

──饒舌なテロップや、役者にあえて台詞で説明させるという画期的な手法は、撮影日数が限られている、演技力がない、というマイナス部分を逆手に取って誕生したわけですね。

「そういうことだよね」

──その後、伊勢さんはダイヤモンド映像、芳友舎(現h.m.p)と移籍して、AVがセル主流になってからソフト・オン・デマンドやムーディーズなどの大手でも撮っているわけですが、常に好きなことをやれていますよね。プロデューサーたちが、KUKI時代のカルト作品を見て、ああいうのをぜひ、と頼んでくるわけですか?

「いや、だいたいこっちから提案する。スタジオで撮るのは息が詰まるから2泊3日で佐渡ヶ島いって撮りましょうよ? とか」

──全国を巡るロードムービーAVもイセリン作品の定番ですよね。女優、スタッフ全員が楽しそうに酒盛りするシーンもあって(笑)。

「女の子も楽しんでますよって伝えたいじゃない?」

──今は制作会社として「鱗太朗商店」があって、ルビーで熟女物を撮ったりしているわけですが、伊勢作品には昔使った映像がいろんな作品に出てきますね。場面転換によく使われる香港の屋台の実景とか(笑)。

「ハハハ。あれは香港に遊びにいったときに8ミリビデオで撮ったやつです」

──ただインサートするだけじゃなく、見え見えの香港の繁華街の映像なのに、「銀座」とテロップを出す。なんて斬新なんだと驚かされますよ。でも、AV監督やっていて旅行に行ったら普通はストック用の映像を撮りますよね? 撮らない人が多いのが信じられない。

「うん、それは考えられない。僕は常にカメラを持ってる。映像のことばかり考えてるの」

──家族旅行にいっても作品用の映像を撮ってます?

「もちろん。子供を連れてキャンプにいっても風景を撮る。ひとりでボーッとドライブに出たときは、運転席から腕を出して、走るタイヤを撮ったり」

──さすが! 伊勢作品の秘密が見えてきた。昨今の熟女物は何日撮りですか?

「2日で3本、もしくは2.5本撮るという感じ。そうやって操業しないと採算取れないから」

──とてもそんな条件で撮ったとは思えない重厚な印象は、地道な日々のストック映像のたまものなんですね。ずっとルビーで続いている『昭和熟女館』シリーズはたとえばどういうスケジュールで?

「昭和っぽいひなびた旅館を探して、チェックインがだいたい午後3時だから、それまでに外景を撮って、さらに別の編集物で使うカラミをモーテルに入って撮る。不倫旅行物とか」

──なるほど。そういうフットワークか。

「濡れ場はね、あとあと使えるようにいろいろ考えるわけです。レズ物とか夜這い物とか、3組分撮って90分作品にするとか。あと、拉●物もある。必ず3組分。2組はちゃんと拉●して車で連れ込むところを撮るわけ」

──そうか。3組目はいきなりカラミから始まっていてもわかりますもんね。

「で、移動の道中の画(え)は違う風景を入れる。車載カメラで撮った北海道とかの映像をミックスする」

──伊勢さんの好きな北海道ロケでたっぷり撮りためたやつだ。

「カラミの撮影はどうしても東京近辺になっちゃうでしょ。そこで別の景色を入れたら、北海道の中標津のモーテルに連れ込まれたことになってくれる、と」

──(笑)あと、さっきの回るタイヤの映像もカットイン。

「そうそう。あれは車を運転するたびに撮ってる」

──今後も、編集物もそうですがルビーでの新作ドラマを楽しみにしています。東映のプログラムピクチャーみたいな語り口のやつを。

「期待されているのかいないのかわからないけど、東映の石井輝男とかのカルト路線は熟女物にしっくりくるんだよ」

──熟女物はパターンが限られているから、イセリン色というのは熟女AVのメニューを潤沢なものにしていますよ。今月、スカパー!アダルトのZaptv(Ch.960)で『【鱗太朗ワールド】尼寺物語~尼僧ぶっかけ念仏講~』が放送されます。見どころを教えてください。

「篠原桐子の張りのある巨乳と、よしい美希の女っぷりが魅力だと思います。尼寺を舞台にした、尼僧たちの欲望。尼僧が住職に手籠めにされ、翻弄される物語ってとこです」

──監督、ありがとうございました。伊勢鱗太朗ロングインタビューはそうそう読めません。これ読んだ人は、ぜひお友達にも教えてあげてください!


Profile
伊勢鱗太朗(いせりんたろう)
1956年徳島県生まれ。東映ギャング映画に惹かれ、大学中退後は映画の道を志すが、勃興中の新メディアであるAVに転向。AV草創期の梁山泊状態だったメーカー「KUKI」の名物監督として辣腕をふるう。現在はルビーから熟女作品を精力的にリリースしている。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報
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