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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第11回 タートル今田(前編)
「大人の女に甘えるほうが好きなんです」
監督

ドキュメンタリー映画の監督として知られる今田哲史はカンパニー松尾率いる「ハマジム」に入社。2006年にタートル今田としてAV監督デビューし、熟女物のハメ撮りドキュメントで頭角を現した。主演女優との会話を大切にしながらライヴ感あふれるFUCKシーンをものにするスタイルを確立している。

──まず、日本映画学校(現・日本映画大学)の卒業制作『熊笹の遺言』(2004年)が劇場公開されて注目された今田監督ですが、もともと映画青年だったんですか?

「違うんです。最初は別の大学を卒業したんですけど、女の子にフラれて落ち込んで就職もせずにブラブラしてたんです。そしたら地元の先輩が飲酒運転とひき逃げでメントリ(免許取消)になったというんで、僕が運転して先輩は助手席、という2トントラックのドライバーになったんです。ルート配送の」

──え。先輩は服役することなく助手席に?

「不幸中の幸いで、死亡事故には至らなかったので。ですが、2トン車の荷物は手積みだから重いし、車内クーラーも壊れてて運転中に熱中症にもなって、つらくて半年でやめたんですよ」

──よく引き受けたもんですね。

「失恋してヤケっぱちになっていたから、どうでもいいやっていう時期だったんです。それに、もともと流されやすい性格なんですよね」

──そこから日本映画学校に入るまでの道のりは?

「ときどき映画は見ていましたが、ヴェンダースの『パリ、テキサス』を見たときに、真っ青な空が綺麗でいいなー、自分でも映画を作ってみたいなと思ったんです。トラックの日当だけじゃ入学金が足りなかったので、5ヵ月くらい自動車工場で働きました」

──劇映画『パリ、テキサス』と出会って入学したけど、ドキュメンタリー映画へと指向が変わった?

「そうなんです。学校の自由研究で、オウム真理教のドキュメンタリー映画を撮った森達也さんを取材させてもらっているうちに、ドキュメンタリーって面白いなって思ったんです。なんせ流されやすい性格なので(笑)。それで在学3年次に原一男さんと出会ったんです」

──『ゆきゆきて、神軍』などを手がけたドキュメンタリー映像作家の原さんですね。

「原さんは、次世代のドキュメンタリー作家を育てようとCINEMA塾を開塾していたんですが、参加しないかと僕を誘ってくれたんです。でも、その後はお金などもろもろの事情があってプロジェクトが空中分解してしまい、『熊笹~』を気に入ってくれた松江哲明さんの編集のお手伝いとかをさせてもらっていたんですね」

──松江さんは映画『あんにょんキムチ』で脚光を浴びて、ハマジムで在日韓国人のAV女優のドキュメンタリー作品も撮ったんですよね。

「松江さんのおかげでハマジムのAVを見るようになって、バクシーシ山下、平野勝之、高槻彰監督たちのアバンギャルドなAVを見て、これは面白いなと思ったんです。そんな時期に、『ちょうど1人やめたからハマジムに来る?』と誘われたんです」

──それは「流される」しかないですね(笑)。

「最初はハメ撮りする気はなくて、一歩引いた位置で撮ってみたいなと思っていて、入社するときにもそう伝えたんです」

──パンツを脱がない前提で入社したのに、なし崩しでハメ撮りに?

「ハマジム社内で、H1グランプリというイベントをやることになったのがきっかけです。女優のギャラ込みで予算は10万円。そのなかでどれだけ面白いものが作れるかを競うんですけど、そこで初めて監督をすることになったんです」

──H1グランプリ、ありましたね。ハマジムの配信専用サイト「PORNOGRAPH」で、素●の女性を一番エロく撮れた者が勝ち、というイベントでしたね。

「僕は当時いたセフレに出演を頼んで、男優を雇うお金がないから自分でハメ撮りしてみっかと、軽い気持ちでやったら意外とできちゃったんです」

──ハメ撮りへの不安は技術面?

「そう。そんなのできるわけがないと思っていたし、カメラが好きじゃなかったんです。映画学校時代はずっと演出が好きで、カメラマンがいい画を撮ってくれたらいいと思っていたので。だからいまだにカメラは上手くならないですね」

──そのあと、DVD商品の『初恋 愛里ひな』がタートル今田初監督作品となるわけですね。女の子はバリバリのロリ系でした。

「最初はロリ系でいこうと思ったんです。僕がつき合う女の子はだいたい同世代だったし、映画も『都会のアリス』の少女とか『レオン』のナタリー・ポートマンのようなロリがすげぇなーと思って魅入られたので」

──おじさんと少女の並びはそれだけでエロスが香りますもんね。

「いいなと思って撮り始めたんですが、やっぱり違うなぁって思ったんです。『都会のアリス』とか『レオン』の少女って、ちっちゃいけど大人びてる。AVの子は逆じゃないですか、大人なのに子供ぶってる。こりゃ全然違うな、とロリ系に興味がなくなったんです」

──ロリと熟女ではどちらのタイプが好きだったんですか?

「最初に撮ったセフレが34歳だったし、年上のほうが好きでした。自分が子供だから子供っぽい子と一緒になると喧嘩になっちゃうし、熟女の人って受け止めてくれるんですよね、撮影現場でも」

──坊やみたいに扱われるほうが居心地いい?

「うん、楽ですね。そういう関係でいるほうが向こうも包容力とかを発揮してくれるし」

──そこからエロいハメ撮りをものにするわけですね。

「形としてはそうですよね。もともと僕の性格的に、女の子に甘えて何でもやってもらうのが好きなんですよ。あんまり威張ったりはしないんですけどね」

──タートル今田作品のインタビューシーンを思い出せば、そういう性格なんだなとよくわかります。

「監督デビューさせてもらって、ロリは“違う"と気づいて、オレは大人の女に甘えるほうが好きだと気づいて、熟女の包容力を自然と求めるようになってきたんです」

──やがて熟女AV専科のマドンナからもオファーが来て、撮るようになっていますけど、どういう経緯で?

「ウチの会社は鎖国主義だったじゃないですか。商業性を無視した作品も多いからお金がなくなってきたので、開国して外貨を入れないと苦しいぞという話になったとき、僕それまでけっこういろんなメーカーからお誘いをいただいていて、そのひとつがマドンナさんだったんです」

──マドンナからタートル今田に白羽の矢が立った理由は?

「光夜蝶というメーカーの『今日、あなたの妻が浮気します。』シリーズで若妻を撮っていたんです」

──『今日、あなたの妻が浮気します。』は今はハマジムがタイトルを譲り受けたんですよね。

「そうです。マドンナさんはあれを気に入っていただいたそうなんです。人妻って基本はドキュメンタリーが中心じゃないですか。高橋浩一監督の『人妻不倫旅行』(ゴーゴーズ)シリーズのように、おじさんとおばさんが温泉でまったり過ごすみたいな、それを僕はまだ若いから若妻でやってみたいなと。どうせだったらリアルな人妻でやりたいなと、それで始めたシリーズなんです」

──今田作品といえば高橋浩一作品と同じくインタビューシーンが長いですよね。若妻から熟女まで、話を聞き出す手法は映画学校時代に学んだノウハウ?

「そうですね。それと、心のなかで原(一男)さんが一番の師匠なんですよ。『とにかくお前ら若い者は人の話を聞かない、この人は嫌いだからとか簡単に決めつけるからよくない』って。『お前らぐらいの年齢で人の好き嫌いをいって話を聞かないなんて論外だぞ』と。ま、そうだなと素直に思いましたね。あと『人の話を聞くときは心をまっさらにして聞きなさい』って」

──今田AVの原点に原一男イズムがあったのか。だから、女優であれ一般女性であれどんな相手でもフラットに入っていけるんですね。

「もともと女の子と仲良くなりやすい性分ですけど、原さんにいわれて、さらに意識的にそうなったんですよね」


Profile
タートル今田(たーとるいまだ)
1976年東京都生まれ。大卒後、トラック運転手や自動車工場勤務を経て日本映画学校(現・日本映画大学)に入学。ドキュメンタリー映画『熊笹の遺言』の監督として注目される。ハマジム入社後は、独特のスローペースな語り口を活かしたハメ撮り作品で人気を博している。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報
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