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連載コラム

天才鬼才インタビュー
カントクたちがAVを撮る理由

第5回 ヘンリー塚本(前編)
「ファミリービデオで脱サラを決意」
監督
昭和が薫る農村や、異国の戦場を背景に男女の肉欲と性愛を描く映像作家・ヘンリー塚本。タブーとノスタルジーをモチーフに、唯一無二の世界観を表現し続ける71歳のAV監督の作品は、1985年のFAプロ設立以来、大人のファンタジーとして長く支持されている。

──勤めていた洋裁会社を39歳のときに辞めたのが、監督の人生の転機だったんですね。

「斜陽産業だったから、このまましがみついても夢がないと思って決断したんです。自分で利益率の高い商売をやろう、それは何だろう? と1週間くらい考えて、当時はまだ40万円もしたビデオカメラと、デッキを2台買った。ベータとVHSを。なんだかんだで200万円。生命保険を解約してお金を作ったんです。それで『何でも撮ります』と書いたチラシを作って、町内のポストに入れて歩いたんです。結婚式や家族のイベントを撮るつもりだったから、社名をファミリービデオプロダクトにして」

──ファミリーがやがて略称のFAになるわけですね。目算どおり、仕事の依頼はあったんですか?

「そうだね。結婚式は3つ4つやりました。そんななかに、夫婦交換のSEXをスワッピングクラブで撮ってほしいという依頼があったんです。それがきっかけで、『個人的に愛人とのSEXを撮ってくれ』『自分は糖尿病で勃たないから、女房が他の男とヤるのを撮ってほしい』とかの注文が来るようになったんです」

──そういう場面に立ち会って、目撃して、撮影もできるという得がたい経験が、AVメーカー設立につながった?

「そういうことです。男女のSEXって、なんてドラマチックで生々しいんだ、と思ったんですよ」

──今のFAプロ作品には戦争物、レ●プ物、レズ物などいろんなジャンルがありますが、最初は何を撮ろうと思われたんですか?

「レ●プです。それまで何本も見たレ●プ物がリアリティが足りなくて拍子抜けしていたこともあって、自分は違うぞと思った。もっと見る人を興奮させて感動させられるものを撮れるはずだと考えたんです」

──そのこだわりはどこから来たんですか?

「僕がレ●プに目覚めたきっかけは、アフリカのサバンナでチーターが鹿を襲うシーンなんです」

──それはテレビ番組で見たんですか?

「うん。頸動脈を噛まれた鹿がパタパタパタッと脚を震わせて力尽きていく、それが女性の脚とダブった。首の長い、か弱い女性が息絶える光景に見えて、なんと官能的なんだと興奮したんです。サバンナの強烈なあのシーンを、性に飢えた男が女性を襲うレ●プに重ね合わせて、僕はここから入っていこうと決めたんです」

──特に、監督が描く、戦場でのレ●プシーンは凄まじいリアリティを感じさせます。「チ●コを入れても結構ですから、どうか殺さないでください」と懇願する女をレ●プして、結局殺しちゃう兵士たちとか、極限の状況ばかりですからね。設定が架空のアジアの国だったり、ソ連の満州侵攻を暗示したものまでさまざまですね。

「あるとき、FA作品を見たお年寄りの女性から手紙が来たんです。『私は満州でロシア兵に捕まって犯された』と。『他の女性は涙を流して苦しんでいたのに、いろんな男が精液を自分のなかに流し込んでいくのが自分はたまらなく気持ちよかった』と」

──へえ……。まさに戦争の裏側ですね。

「そうなんです。『自分は生きて日本に帰ってきて結婚もしたけど、このことは誰にも話していません。ぜひドラマとして作ってください』と匿名の手紙が来たんですよ」

──ユーザーのリクエストによって作品が生まれることも多いですか?

「レズビアン物なんてまさにそうでした」

──そういえばヘンリー塚本監督とレズの接点は何だろうと思っていました。

「僕はレズに興味がなかったんだけど、実際のレズビアンの人が会いに来た。『同棲している彼女がいる。自分たちのアパートで撮ってほしい』と。それでアパートへいったら、僕の前でSEXするわけ。男と女のSEXよりも貪欲に求め合うの! 他社が作っているレズ物を見たけど、ただ女と女のカラミを撮っているだけで、生々しさもリアリティもない。本物のカップルは、まさに男と女の肉欲のごとくFUCKをするわけ。あらゆる器具を使って快感を求め合うんです」

──女同士の貪り合いに興奮したんですね。

「興奮した。それで『愛と誠』というタイトルで販売したのが始まりです。それの反響は今ひとつだったけど、あとに出した『ネコとタチ』というレズ物は、業界に衝撃を与えたくらいヒットしましたね」

──FAプロの看板シリーズのひとつにまでなりましたからね。男女の生々しい接吻はもちろん、レズ物の接吻もFA作品の大いなる売りですよね。

「そう。レズで大事なのは接吻です。舌遣いです」

──やはり最初に出会ったレズのカップルの接吻が始まりですか?

「そうですそうです! 女同士も唾を飲み合うということを僕は初めて知った。美味しそうに飲み合うのを見て衝撃を受けましたね。あれは、その後の僕のレズ作品にも男女の性交シーンにも影響を与えましたねぇ」

──いま、男性向け週刊誌などでもFAプロ作品が特集され、「昭和のエロス」がブームですよね。監督の昭和の風景へのこだわりをぜひ聞かせてください。

「僕は昭和18年に生まれて、戦後の混乱期を千葉県で過ごしたんです。親父は亡くなり、未亡人のおふくろのもとで僕たち5人兄弟が暮らした。そんな、自分の生きた昭和こそ、僕が描ける世界なんですよ」

──すべてのFA作品の昭和の風景はそこが原点なんですね。

「昭和と、疎開していた千葉県の風景が、どうしても作品に出てくる。僕がその世界に入るとね、なんていうか、運命に糸を引きつけられるがごとく、想像力というか、ドラマが湧き出てくるんですよ」

──納得です! 初潮を迎えたばかりの妹と兄の近●相姦など、アイデアは尽きないのでしょうね。

「そう。あの日、あのころに覗き見たものとか、本や映画で見たものが積み重なって、湧き出てくるんですよ。近●相姦は非道徳だしあってはならないことなんだけど、人間て、やってはいけないことをやるところにドラマがある」

──そうですね。誰もが魅入られる世界ですよね。

「そこにこそ、地獄のような快楽がある。通常のSEXではあじわえないものがあるんですよ。これを描くのは難しいけど、これが僕にとってのAVなんです」

──なるほど、基本の設定はすべて「非道徳」。

「非道徳な肉欲に、人間の本質が見えるんですよ」


Profile
ヘンリー塚本(へんりーつかもと)
1943年東京都亀戸生まれ。東京大空襲で父と2人の兄を亡くした戦中派にして、いまだ第一線で活躍を続けるAV監督。1985年に自身がオーナーとしてAVメーカー「FAプロ」を設立。同社が制作したタイトルは2000を超えた。


文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan


放送情報

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